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福永武彦草稿 「忘却の河」

著者名:
福永武彦
冊数:
226枚

ペン書 200字詰「A RS LONGA, VITA BREVIS」用箋226枚完 *『新潮日本文学アルバム福永武彦』に掲載されている草稿の原本。*「忘却の河」(第一章)は、「文芸」昭和三十八年三月号に初出。欄外に「文芸三月号」のスタンプ有。*この小説の初版後書には「私には各々の章が独立した作品であるかのような印象を与えたいという意図があった」とある。そのため、書籍『忘却の河』に含まれる各々の小説はそれぞれ発表された文芸誌が異なっていた(第一章と第七章は「文芸」、ほかの章はそれぞれ別の雑誌)。またこの作品は、新しい形式の長編小説を書きたいと思っていながらなかなか書き上げることが出来なかった作品の三つ目であるとしている。(「風土」「草の花」に続く3つ目の長編小説)*使われている原稿用紙には「A RS LONGA, VITA BREVIS」と印字されている。古代ギリシアの医師ヒポクラテスの『箴言』より、「技術は長く、人生は短し」(技術習得には時間がかかる、時間を無駄にしてはならない)の意。*主人公は戦後会社を興して社長となった中年男。若いころから罪悪感を抱え、過去を思い出すことを恐れ、記憶を失いたいと願っている。台風の翌日、雨に濡れたビルの窓が目のように見えた。峻烈なそのまなざしが彼に過去を見させ、彼は忘却したいと願っている記憶を、死者たちの事を物語る。物語は過去と現在が頻繁に交差し、切り替わり、折り重なってゆく。男は台風の夜に町で苦しむ若い女と出会い、彼女を病院へつれてゆく。二人の間に交際が始まり、家族には秘密で女の住まいを幾度も訪れるようになる。その折々で彼は過去を回想する。幼い日に聞いてしまった親の会話から、自分は川に捨てられるのではないかと恐れたこと。社会主義活動への参加と離脱、肺病にかかり入院、看護婦だった女と出会い未来を約束したこと、しかし親の反対で結婚を断念したこと、彼女のその後、彼女の故郷にあった賽の河原のこと。戦地のジャングルで戦友を失ったこと、戦後戦友の故郷を訪れたこと……。男には10年間寝た切りの妻がいて、娘たちがいる。妻は、30年前に産まれてすぐに死んだ子に対して男の態度が酷薄だったと、今でも責める。男はかつての恋人や戦友の死という苦い記憶を引きずり、自分の事を生きる事への誠意が足りない人間だと自覚し、他者との間に線を引いて生きている。しかし台風の夜に出会った女と逢瀬を重ねてゆくうちに、そこに自分が生きられる場所を見つけたように感じるが、女はやがていなくなってしまう。彼女の部屋はよどんだ運河のほとりにあった。運河はまるで、その水を飲むと生前の記憶がなくなるという忘却の河のようだ。男は彼女が住んでいた部屋を借り、そこで原稿用紙を前にする。

No.
82005
価格:
1,200,000円