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福永武彦草稿 「夢の通ひ路」

著者名:
福永武彦
冊数:
139枚

ペン書 200字詰原稿用紙139枚完 *『忘却の河』の第四章にあたる。初出は『小説中央公論』昭和38年12月号、欄外に「小説中央公論十月号」のスタンプ有。*第一章「忘却の河」で主人公だった男の妻が、この小説の主人公・藤代ゆき。それぞれの段落が長く、連綿とつながるような文体で、寝たきりの人が曖昧な時間の中でつらつらと物思うように語られる。また、折々に式子内親王の歌が印象的に挿入される。長年病で動くことが出来ず思念にひたり続けたためか、その言葉の端々に深い洞察が発せられる。『忘却の河』全体の中で、この章は折り返し点であり、クライマックスともいえる迫力がある。*多くの不幸はあっても確かに両親に愛されて育った彼女は、家族にあこがれを持っていた。しかし結婚した相手は得体のしれない陰湿さを抱えた冷淡な男。子供ができれば両親のように幸せな家庭を築くことが出来ると期待したが、生まれてきた男の子はすぐに死んでしまい、死んだ子に対しても冷酷だった夫に、彼女は期待することをやめる。長女の美佐子が生まれても夫婦は断絶したまま、夫は忙しく留守にすることが多い。彼女が30に差し掛かり、いよいよ戦争が深刻になってきたころ、呉という学生に出会う。彼の身に迫る出征と戦死という現実を理解していてなお、それを受け入れて一日一日を生きようとする若者に、惰性で生きてきたと自覚している彼女は生まれて初めての恋をする。彼女は初めの内こそ己の想いに戸惑いはしたが、真面目な彼に積極的に迫り、想いを確かめ合い、短い期間だったが愛を伝えた。その後彼は出征、やがて戦死の報を受ける。戦後、復員してきた夫と表面上は家族を構築したが、彼女は病に倒れ寝たきりになってしまう。体の自由を奪われた彼女は生きているのか死んでいるのかわからないような気持ちのなかで、むしろ夢の中でこそ自由に、死んだ人たちと交流する。自身の死が近づいていることを自覚しつつ、夢の通い路を通って、ふたたび呉と邂逅することを、あの日々に帰ることを願う。

No.
82008
価格:
500,000円